全国社会科教育学会のISSA連携フォーラムの開催報告

 「全国社会科教育学会ISSA連携フォーラム」は例年、全国社会科教育学会の全国研究大会に合わせて開催されてきたが、第3回となる今年度は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響もあり、全国研究大会とは別日程かつオンラインで開催された。

 本年度のテーマは「How can social studies contribute to achieving Sustainable Development Goals?: Focus on SDG3: Teaching and Learning of “Health and Disease”( SDGsの達成に、社会科はどのように貢献することができるか-SDG3「健康と疾病」の指導と学習に焦点を当てて-)」であった。持続可能な社会やその創り手の形成に向けて、世界レベルの取組であるSDGs(持続可能な開発目標)に注目が向けられている。よりよい社会やその市民の形成に取り組んできた社会科はいかにして、SDGsに関わるべきであろうか。また世界では今なおCOVID-19が猛威を振るっている。COVID-19に限らず我々の健康や幸福に関する諸問題は、持続可能な社会の形成にあたって避けて通ることはできないものである。これらの諸問題を社会科ではどのように指導するべきであろうか。このような問題意識から、第3回のフォーラムテーマが決定された。

 フォーラムのテーマ「SDGsの達成に、社会科はどのように貢献することができるか」を議論すべく、日本とシンガポールから二人のパネリストが選ばれた。一人が筑波大学の井田仁康氏であった。地理教育およびESDを専門とする井田氏は「How to Protect Yourself from Disasters: The Role of Social Studies with collaboration in Asia(災害から自らを守る方法―アジアと協同した社会科の役割)」と題して、日本の社会科における防災教育の状況を紹介しつつ、アジア諸国との連携のあり方を提案した。もう一人のパネリストはNational Institute of Education, Nanyang Technological UniversityのChew-Hung CHANG氏であった。地理教育および気候変動(教育)の専門家であるChang氏からは「What does future-ready social studies education look like? Insights from teaching and learning geography(将来に備える社会科教育とはどのようなものか?地理の指導と学習から得られる見識)」という発表で、社会の変化、OECD2030、地理教育の動向、気候変動などグローバルな視点から、持続可能な社会に向けての社会科(地理)のあり方が主張された。

 日本国内外から約50名(パネリストなど運営者を含めると約60名)の参加者を得て、限られた時間ながらも積極的な質疑応答がなされた。主な質問は、1)持続可能な開発のための教育(ESD)に取り組む際の社会科や地理の強み、2)社会科において健康や幸福を確保・促進する方法、3)学習方法論、4)日本における教員養成・研修の制度、であった。

 全体を通して90分という短い時間ではあったが、本テーマを介して、1)SDGsあるいは持続可能な社会に関する学習の事例、2)社会科・地理の役割、3)教師(教育)の役割の重要性の再確認、について議論や情報の共有ができた。COVID-19により対面で本フォーラムを実施することは断念せざるを得なかったが、オンラインで開催されたため国外の研究者が参加できた点は、本フォーラムにとってプラスの影響であったといえる。

 最後になるが、本フォーラムの開催にあたり、金鍾成氏が全体の進行を務め、坪田益美氏、川口広美氏が質問等の集計・翻訳作業を行った。なおテーマの立案、当日の趣旨説明・まとめは、𠮷水裕也および阪上弘彬が担当した。

文責:𠮷水裕也・阪上弘彬