会長挨拶

全国社会科教育学会は、社会科教育に関する科学的研究を行い、社会科教育学および社会科教育実践の発展に寄与することを目的とする学会です。大学で社会科教育を研究している研究者、小学校・中学校で社会科教育、高等学校で地理歴史科・公民科教育の実践に携わっている教育研究者を主たる構成員とした集まりです。第二次世界大戦後、社会科は学校教育の新たな教科として設置されました。それ以来、社会科教育の歴史は70余年を数え、社会科教育を研究対象とする本学会も来年で70周年を迎えます。

社会科教育は、子どもが「よりよく社会をわかること」「健全な社会の構成員としての資質・能力を身につけること」を目的としています。“よりよく”や “健全な”の意味するところは、社会的・文化的・歴史的文脈によって異なるため、社会や国家そして時代をこえて、唯一の正しい在り方を求めることはできないでしょう。しかし、自由闊達に議論を重ねていくことは有意義なことであり、必要なことです。議論の前提として、社会や国家をこえた研究方法論や仮説、データ、成果などを共有することは有益なことです。そうした研究方法論や研究成果などを共有してこそ、彼我の異同を理解し、相互に理解し合う方途を見出すことができるのではないでしょうか。学会とはまさにそのような場です。

第二次世界大戦前の日本にも社会系教科と総称することのできる地理、歴史、公民、修身といった諸教科がありました。戦後、それらの諸教科が社会科という広域総合教科に統合されました。戦前と戦後の教育の最も大きな違いは、教育に対する教師の自由と責任が生まれたことだと言ってよいでしょう。社会科とはどのような教科なのか(本質)、何にために(目標)、何を(内容)、どのように(方法)子どもに学ばせればよいのか。このような問いを一体として考察する必要性と自由に議論することのできる権利が保証されたことが、社会科教育に関する学問的研究の成立と発展をもたらしてきました。

こうした中、全国社会科教育学会の活動は、国内的にも国際的にも充実・発展してきています。近年では、会員個々人の研究発表や議論の場を提供するだけでなく、様々なプロジェクトを実施して、学会自体が積極的に会員の研究促進の役割を果たそうとしています。社会のあらゆる領域で進んでいるグローバル化は、本学会の活動にも影響しています。アジア・太平洋地域に拠点を置く社会科教育の学術研究団体を構成員とする国際社会科教育学会 (英文名:International Social Studies Education Research Association / 略称 ISSA)の立ち上げで主導的な役割を果たし、加盟学会が国際的な研究と実践活動を通して,社会科教育の発展と学会相互の交流と連携を図ることを積極的に推し進めています。また、学会活動の拡大・充実に伴って委員会活動の拡充・発展が必要となる中で、従来の組織・活動では十分な対応が難しくなっているため、新たな委員会活動のあり方を構築し、それに伴って会務分掌の見直しも行ってきています。

皆様が、全国社会科教育学会の諸活動を通して、社会科教育のあり方を深く考えていただき、その結果、日々の授業がより良いものになっていくことを願っています。

全国社会科教育学会会長
木村 博一(広島大学大学院人間社会科学研究科(教育学系))